シャドーイングを始めてはみたものの、自分の音がよくなっているのかどうかが分からない、という声をとてもよく聞きます。
お手本を追いかけて口は動いている、時間も毎日とっている、それなのに手ごたえだけがいつまでも出てこない。
この「手ごたえが出ない」の正体は、たいていの場合、練習量ではなく手順のほうにあります。
シャドーイングは、自分の口から出た音を自分で確かめるところまでやって、はじめて一周します。
ところが、その「確かめる」がいちばん面倒で、いちばん飛ばされやすい工程です。
ここを引き受けてくれるのが、いまのAIです。
素材そのものを作らせる、読み上げさせてお手本の音を用意する、自分の録音を文字に起こさせて落ちた音を目で見えるようにする。
AIに任せられるのはこの3か所で、耳と口の仕事はこれまでどおり自分が持ちます。
この記事では、道具の名前ではなく手順の側から、スマホ1台でまわる形にして書きます。
- ✓ シャドーイングで伸びるのは何で、どんなやり方だと伸びにくいのか
- ✓ 素材の選び方(速さ・内容・長さの3つだけ見る)
- ✓ 1回15分で終わる5ステップの手順
- ✓ AIに任せる3か所と、そのときに出す指示の文
- ✓ AIの文字起こしで事故るポイントと、その避け方
- ✓ 日本語話者が落としやすい音と、2週間・1ヶ月の進め方
AIシャドーイングの使い方は「素材・15分・録音」の3つに絞れる
先に結論だけ置きます。
AIシャドーイングの使い方は、①AIに素材を用意させる ②1回15分の手順を回す ③自分の声を録音してAIに文字起こしさせる、の3つだけです。
この3つの外側にあるものは、はじめのうちは全部おまけだと思って構いません。
アプリを増やすことでも、教材を買い足すことでもなく、この3つが毎日まわるかどうかで景色が変わります。
AIが担当するのは「素材」と「可視化」、耳と口は自分がやる
役割をはっきり分けておくと、あとの判断が速くなります。
AIが得意なのは、台本を作ること、それを読み上げること、そして自分が出した音を文字に変えることです。
反対に、AIがやってくれないのは、聞き取れているかどうかの手ざわりと、口の動かし方の調整です。
ここを取り違えて「AIが直してくれる」と思って始めると、たいてい2週間で止まります。
スマホ1台でそろう道具だけを使う
必要なものは、音が出るスマホと、録音できるアプリと、文字起こしができるAIの3つです。
録音はスマホに最初から入っているボイスメモで足ります。
イヤホンは、あるなら使ったほうが自分の声とお手本が分かれて聞こえるので、練習の精度が上がります。
専用のシャドーイングサービスも世の中にはありますが、この記事では道具に依存しない形だけを書きます。
手順が身体に入っていれば、あとでどの道具に乗り換えてもそのまま使えます。
最初の1回でやることだけ先に決めておく
初日は、30秒の音源を1本だけ用意して、それを15分かけて回します。
長い音源を選んで最後までたどり着けないのが、初日のいちばん多い失敗です。
30秒でも、音を細かく見ていくと15分はあっという間に溶けます。
初日に狙うのは上達ではなく、「同じ手順をあしたも回せる」という確認だけです。
シャドーイングで伸びるのは「音の知覚」と「処理の自動化」
手順に入る前に、この練習が何を動かしているのかを一度だけ整理します。
ここが曖昧なままだと、あとで「いまのやり方でいいのか」を自分で判断できなくなるからです。
音の知覚|知っている単語なのに聞き取れない理由
読めば分かる文なのに、音で流されると分からない、という経験はほとんどの人にあります。
これは語彙の問題ではなく、頭の中に置いてある音の形と、実際に流れてくる音の形がずれているために起きます。
たとえばwaterを「ウォーター」という形で覚えていると、アメリカでよく聞く「ワラー」に近い音とは重なりません。
シャドーイングは、この「頭の中の音の形」を実際の音のほうへ書き換えていく作業です。
だから、口を動かすことそのものより、お手本と自分の差に気づくことのほうが本体になります。
処理の自動化|意味を考える余裕を作る
もうひとつの働きが、聞いた音を処理する速さを上げることです。
英語を聞いているとき、頭の中では「音を拾う」「単語に分ける」「意味をとる」が同時に走っています。
このうち前半の2つに力を使いすぎると、意味をとるところに回す分が残りません。
シャドーイングを続けると前半が手間をかけずに回るようになり、そのぶん意味のほうへ注意を向けられるようになります。
ただしこれは時間のかかる変化で、数日でひっくり返る種類のものではありません。
伸びにくいやり方|意味を追いながら口だけ動かす
いちばんもったいないのが、意味を考えながら、口だけをなんとなく動かしている状態です。
この形だと、注意が意味のほうに行っているので、音の差に気づく余地がなくなります。
結果として、聞き慣れた音をなぞる時間だけが増えて、頭の中の音の形はそのまま残ります。
- ✓ 意味は、シャドーイングに入る前に済ませておく
- ✓ 追いかけている最中は、音の形だけに注意を置く
- ✓ 追いつけない箇所は、飛ばさずに止めて、そこだけ何度も回す
- ✓ 「なんとなく言えた」で次へ行かない
意味の理解と音の練習は、同じ15分の中で混ぜないほうがうまくいきます。
AIシャドーイングの素材の選び方|速すぎない・知っている・1分以内
手順よりも先に効いてくるのが、素材選びです。
合っていない素材を選ぶと、どれだけ正しい手順で回しても、時間だけが過ぎていきます。
見るところは3つだけで、速さ・内容・長さです。
速さ|1.0倍で7割ほど聞き取れるものを選ぶ
最初に聞いたときに、スクリプトを見ないで7割くらい輪郭がつかめる速さが目安です。
半分も分からない素材は、シャドーイングではなく聞き取りの練習になってしまいます。
逆に、10割すぐ分かる素材は、音を書き換える余地が少ないので伸びしろが小さくなります。
速さが合わないと感じたら、素材を変えるより先に、再生速度を0.9倍へ落として試してください。
速度を落としても音のつながり方そのものは残るので、練習としては十分に成立します。
内容|すでに知っている話を選ぶ
内容は、はじめて読む話ではなく、すでに意味を知っている話のほうが向いています。
意味が分かっていれば、練習中の注意を丸ごと音のほうへ置けるからです。
自分が日本語でよく話す話題、仕事で毎日触れている分野、好きな作品のあらすじなどが候補になります。
「知らない内容を英語で聞く」のは、シャドーイングとは別の練習として分けたほうが速く進みます。
長さ|1分以内、はじめは30秒でいい
素材は短いほど回転が上がるので、はじめは30秒前後を選びます。
30秒の音源を10回まわすほうが、5分の音源を1回流すよりも、音の差にはるかに多く気づけます。
慣れてきたら1分まで伸ばして、それ以上はあまり増やさないほうが続きます。
| 見るところ | 合っている素材 | やめておく素材 |
|---|---|---|
| 速さ | 1.0倍で7割ほど輪郭がつかめる | 半分も追いつけない/全部すぐ分かる |
| 内容 | すでに意味を知っている話 | 専門用語が続く初見の話 |
| 長さ | 30秒〜1分 | 3分以上の動画をそのまま使う |
| 話し方 | ひとりで淡々と話している | 複数人が同時にかぶせて話す |
| 音質 | 雑音が少なく声がはっきりしている | 屋外の収録で風の音が乗っている |
素材そのものをAIに作らせるという手もある
ここがAIを使う人のいちばん大きな利点です。
ちょうどいい素材を探して何十分も消えてしまうくらいなら、条件を伝えて作らせたほうが速く終わります。
指示に入れるのは、場面・語数・使ってほしい表現・避けてほしい表現の4つです。
- ✓ 場面=「カフェで注文して席を探すまで」のように具体的に切る
- ✓ 語数=「70語くらい」と数で指定する(30秒前後になる)
- ✓ 使ってほしい表現=自分がまだ口から出てこない言い方を3つほど指名する
- ✓ 避けてほしい表現=書き言葉らしい硬い言い回しを外してもらう
指示の文は、たとえばこういう形にします。
「アメリカのカフェで注文して席を探すまでの会話を、70語くらいの自然な話し言葉で書いてください、硬い書き言葉は使わないでください」。
自分の暮らしで実際に起きる場面を指定できるのが、既製の教材との決定的な違いです。
ただし、出てきた英文が本当に自然かどうかは別問題なので、違和感のある言い回しは無理に採用しないでください。
私はここを、アメリカ人のパートナーに実際に声に出して当ててみて、引っかかった文だけ落とす形にしています。
AIシャドーイングの手順|1回15分の5ステップ
ここからが本体です。
30秒の素材1本を、15分かけて5つの工程で回します。
| 工程 | 時間 | やること | スクリプト |
|---|---|---|---|
| ①聞く | 2分 | 音だけを3回流して輪郭をつかむ | 見ない |
| ②読む | 3分 | スクリプトを見ながら音に重ねて読む | 見る |
| ③影で追う | 5分 | スクリプトを閉じて音だけを追いかける | 見ない |
| ④録音 | 2分 | 通しで1回、自分の声を録る | 見ない |
| ⑤比べる | 3分 | 自分の録音とお手本を交互に聞いて差を探す | 見る |
①聞く(2分)|スクリプトを開く前に音だけを入れる
最初は文字を見ずに、音だけを3回流します。
ここで大事なのは、聞き取れなかった場所を覚えておくことです。
先にスクリプトを見てしまうと、文字の力で「聞こえたつもり」になり、あとで差が見えなくなります。
この2分を飛ばすと、練習全体が音読に寄っていきます。
②スクリプトを見ながら読む(3分)|文字と音を突き合わせる
次にスクリプトを開いて、音に合わせて声に出します。
ここで、①で聞き取れなかった場所に何が書いてあったかを確認します。
だいたいの場合、知らない単語ではなく、知っている単語がつながって別の音になっていただけです。
その箇所に印を付けておくと、あとの工程で戻ってくる場所がはっきりします。
「知らなかった」ではなく「つながって聞こえなかった」を見つけるのが、この3分の目的です。
③見ないで影で追う(5分)|ここがいちばん長い
スクリプトを閉じて、音だけを追いかけます。
お手本から半拍ほど遅れて、影のようにくっついていくイメージです。
途中で落ちても止めずに、次の文から戻って乗り直します。
5分のうち、最後の2分は「落ちる場所」だけを切り出して繰り返すのがおすすめです。
落ちる場所は毎回ほぼ同じで、そこが自分の音の弱点そのものです。
④録音する(2分)|通しで1回だけ録る
ボイスメモを開いて、通しで1回だけ自分の声を録ります。
納得いくまで録り直したくなりますが、ここでは1回で構いません。
目的はよい録音を作ることではなく、いまの状態を残すことだからです。
お手本を流しながら録ると自分の声が埋もれるので、お手本は止めて、自分の声だけを録ります。
この録音が、あとでAIに渡す材料になります。
⑤自分の音とお手本を比べる(3分)|差を1つだけ決める
最後に、自分の録音とお手本を交互に聞きます。
同じ文を、お手本→自分→お手本の順で聞くと、差がいちばんはっきり出ます。
気になる差はいくつも出てきますが、その日直すのは1つだけに絞ります。
「文の終わりの子音が消えている」「thが全部サ行になっている」のように、言葉にして1行メモに残します。
1日1つずつでも、言語化して積んでいくと、2週間で自分の癖の一覧ができあがります。
AIを英語学習にどう組み込むかを、手を動かしながら学べる無料のウェブセミナーもあります。
AIが担うのは3か所|台本づくり・読み上げ・文字起こし
ここで、AIがどこに入ってくるのかを工程ごとに整理します。
入れる場所は3か所だけで、それ以外は自分の耳と口の仕事として残します。
| AIが入る場所 | やらせること | 自分が残す仕事 |
|---|---|---|
| 素材づくり | 自分の場面とレベルに合わせた台本を書かせる | 不自然な言い回しを落とす |
| 読み上げ | 台本を音声にしてお手本の音を作る | 速さを自分に合わせて調整する |
| 文字起こし | 自分の録音を文字に変えて落ちた音を見えるようにする | 録音を自分の耳で聞き返す |
①自分のレベルに合わせた台本を作らせる
市販の教材がしんどいのは、難しすぎるか、逆に自分の生活と関係がないかのどちらかです。
AIに書かせると、この2つを同時に外せます。
指示には、場面と語数に加えて「中学卒業程度の単語で」のような難易度の条件を足します。
難しい単語が並んだ台本は、音の練習には向きません。
シャドーイングの素材は、読めば全部分かるくらいやさしいところから始めて構いません。
②読み上げさせてお手本の音にする
台本ができたら、読み上げ機能で音にします。
スマホの読み上げ機能でも、AIチャットの音声機能でも、音になればそれで足ります。
速さが合わないときは、再生速度を落とすか、ゆっくり読むように指示します。
合成音声は、人の声にくらべて音のつながりや省略が弱く出ることがあります。
そのため、仕上げの段階では人が話している音源も混ぜたほうが、実際の会話との距離が縮まります。
最初の入り口としては、いつでも好きな台本を音にできる手軽さのほうが大きな利点になります。
③自分の録音を文字起こしさせて、落ちた音を機械に見せる
ここが、AIを使ういちばんの理由です。
自分の録音を文字起こしにかけると、機械が自分の音をどう受け取ったかが文字になって出てきます。
そこに元のスクリプトを並べて、違っているところを探します。
AIに渡すときは、「元の英文はこれです、私の音声の文字起こしと見比べて、違っている単語だけ並べてください」と伝えます。
違いが出た単語が、そのまま「相手に届いていない可能性が高い音」の候補になります。
- ✓ 元の英文と、自分の録音の文字起こしを両方そろえてから渡す
- ✓ 「直して」ではなく「違いを並べて」と頼む
- ✓ 並んだ違いのうち、同じ種類のものをまとめて1つの癖として扱う
- ✓ 出てきた結果を、そのまま自分の発音の評価だと思い込まない
ここで事故る|AIの文字起こしは「言ったつもり」に補正されることがある
ここだけは、太字にしてでも伝えておきたいところです。
文字起こしのAIは、音をそのまま文字にしているのではなく、前後の流れから「たぶんこう言った」を推測して書いています。
つまり、実際には音が落ちていても、文脈から補われて正しい単語として出てくることがあります。
私自身、語尾を飲み込んで言ったつもりの文が、きれいな文として起こされてきたことが何度もあります。
何が起きているのか
文字起こしは、音の情報だけでなく、その言語で自然な語の並びも手がかりにして結果を出します。
だから、前後がはっきりしている文ほど、途中の弱い音は補われやすくなります。
元のスクリプトをいっしょに渡した場合は、さらにそちらへ引っぱられることもあります。
文字起こしが正解を返してきても、それは「通じる音が出せた」の証明にはなりません。
だから録音を聞き返す工程を消さない
この性質があるので、⑤の「自分の耳で聞き返す」を機械に置き換えてはいけません。
自分の耳は、文字になった結果ではなく、実際に出た音そのものを聞いています。
お手本と自分の録音を交互に聞けば、補正の入りようがありません。
AIの文字起こしは「答え合わせ」ではなく「ズレの発見器」として使うのが、いちばん事故が少ない扱い方です。
補正を減らすための小さな工夫
完全には防げませんが、補正を減らす方向に寄せることはできます。
- ✓ 元のスクリプトを渡さずに、まず素の状態で文字起こしさせる
- ✓ 文全体ではなく、落ちやすい1文だけを切り出して起こさせる
- ✓ 同じ録音を2回起こさせて、結果が揺れる箇所を弱点とみなす
- ✓ 静かな場所で録って、雑音による取りこぼしと切り分ける
とくに、結果が2回で揺れる箇所は、機械にとっても判断が難しい音が出ているということです。
「安定して正しく起こされる」を目標に置くと、練習の目印としてちょうどよく働きます。
シャドーイングで日本語話者が落としやすい音5つ
自分の癖を探すとき、まったくの白紙から探すより、よくある型を先に知っておいたほうが速く見つかります。
日本語を母語にしている人が落としやすい音は、だいたい次の5つに集まります。
①語尾の子音|母音を足してしまう
日本語は、ほとんどの音が母音で終わります。
そのため、bookが「ブック」、catが「キャット」のように、最後に余分な母音がくっつきます。
この余分な母音があると、音の数が増えてリズムが崩れ、お手本に追いつけなくなります。
語尾の子音は「言い切らずに止める」意識で口の形だけ作ると、リズムが一気に合いはじめます。
②th|サ行とザ行に寄ってしまう
thinkが「シンク」、thatが「ザット」になるのが、よくある形です。
舌先を上下の歯で軽くはさんで、そこから息を出す音なので、口の形が違えば別の音として届きます。
ただしthは出てくる回数が多いぶん、直したときの効きも大きい音です。
③lとr|どちらもラ行で処理してしまう
日本語にはlとrの区別がないので、どちらもラ行に吸収されがちです。
lは舌先を上の歯の裏につけたまま声を出し、rは舌をどこにも当てずに奥へ引きます。
riceとlice、rightとlightのように、意味がまるごと変わる組み合わせが日常語の中にあります。
聞き分けよりも先に、まず自分の口で作り分けるほうが手をつけやすいです。
④リンキング|単語のつなぎ目が消える
英語は、単語の切れ目をはっきり置かずに、前の音と次の音をつないで発音します。
pick it upが「ピキラップ」に近い1つのかたまりになるのがその例です。
「知っている単語なのに聞き取れなかった」のほとんどは、ここが原因です。
シャドーイングの③の工程で落ちる場所も、たいていリンキングのかたまりの上にあります。
⑤flapのt|tがラ行のような音になる
アメリカ英語では、母音にはさまれたtが、日本語のラ行に近い軽い音になることがよくあります。
waterが「ワラー」寄り、betterが「ベラー」寄りに聞こえるのがこれです。
この音を知らないまま「ウォーター」と覚えていると、聞くときも話すときも同時につまずきます。
| 落ちやすい音 | ありがちな出方 | その場で試す直し方 |
|---|---|---|
| 語尾の子音 | bookが「ブック」になる | 最後の母音を足さずに口の形だけ作って止める |
| th | thinkが「シンク」になる | 舌先を歯で軽くはさんでから息を出す |
| lとr | riceとliceが同じになる | lは舌先を歯の裏へ、rはどこにも当てない |
| リンキング | 単語ごとに区切って読む | 2語をひとかたまりとして声に出す |
| flapのt | waterを「ウォーター」と言う | tを軽く弾いて「ワラー」寄りに寄せる |
アメリカ在住のシャドーイングで、実際に通じなかった音
ここからは、私がアメリカで暮らしていて実際につまずいた音の話を書きます。
教材の中では何ともなかった音が、店の中では一度で伝わらない、ということが普通に起きます。
waterが一度で通らなかった
いちばん最初につまずいたのが、水を頼む場面でした。
「ウォーター」と言うと聞き返され、言い直しても伝わらず、結局メニューを指さすことになりました。
あとで音を確かめると、tを丁寧に出しすぎていて、強く置く位置も後ろにずれていました。
前を強く置いて、tを軽く弾く形に変えたら、同じ店で一度で通るようになりました。
riceを頼んだつもりが伝わらなかった
もうひとつが、riceです。
rを舌先で作っていたので、日本語のラ行に近い音になり、相手が一瞬止まる反応を何度も見ました。
舌をどこにも当てずに奥へ引く形に直したら、聞き返しが減りました。
通じないときは語彙や文法ではなく、たった1つの子音が原因ということが本当によくあります。
アメリカ人のパートナーに当てて確かめた
自分の音が届いているかどうかは、家の中で確かめられます。
私はアメリカ人のパートナーに、文脈を伏せたまま単語だけを言って、何に聞こえたかを答えてもらう形で確かめています。
文脈があると相手も補ってしまうので、単語だけを切り出すのがポイントです。
これは、AIの文字起こしが補正してしまう話とまったく同じ構造です。
人に当てるときも、AIに当てるときも、文脈を外してから測ると本当のところが見えます。
下は、私が実際に言い直すことになった表現を、4点セットで並べたものです。
| 英文 | 直訳 | 実際どういう意味か | いつ使うか |
|---|---|---|---|
| Can I get a water? | 水をもらえますか | 水を1つください、という注文の言い方 | カフェやレストランで飲み物を頼むとき |
| Could I get that with rice? | それをライスと一緒にもらえますか | 付け合わせをライスにしてください | 付け合わせを選べる店で注文するとき |
| Sorry, could you say that again? | すみません、もう一度言ってもらえますか | 聞き取れなかったので言い直してほしい | 相手の話が速くて追えなかったとき |
| I'll take it. | 私はそれを取ります | それにします、と決めたことを伝える | 買うものや頼むものを決めたとき |
| That works for me. | それは私にとって働く | それで大丈夫です、という同意 | 時間や場所の提案に返事をするとき |
どれも難しい表現ではありませんが、音が1つずれるだけで聞き返される種類の文です。
シャドーイングの素材は、こういう「自分が実際に言う文」に寄せるほど、効いてくるのが早くなります。
AIシャドーイングの2週間・1ヶ月の進め方とやめどき
手順が決まったら、あとは日付の使い方の話になります。
ここを決めておかないと、毎日「今日は何をやろう」で止まって、その迷いが続かない理由になります。
最初の2週間|同じ素材を1本だけ回す
最初の2週間は、素材を増やさずに同じ1本を毎日回します。
同じ音を繰り返すからこそ、昨日との差が分かるようになります。
毎日ちがう素材にすると、毎日ゼロから聞き取るだけになって、音を書き換える段階まで進みません。
録音は毎日残して、1日目と7日目と14日目を並べて聞くと、変化が耳で分かります。
同じ素材を14日続けるのが、いちばん手間が少なくて、いちばん差が見える形です。
1ヶ月目|素材を3本に増やして場面を変える
2週間まわったら、素材を3本まで増やします。
増やすときは、難しさを上げるのではなく、場面を変えるほうを先にします。
- ✓ 1本目=買い物や注文など、自分がいちばん使う場面
- ✓ 2本目=仕事や学校など、少し長い文が出てくる場面
- ✓ 3本目=雑談など、省略やくだけた言い方が多い場面
- ✓ 3本を日替わりで回し、週に1回は最初の1本へ戻る
場面が変わると、落ちる音の種類も変わります。
そこで新しく出てきた癖を、また1行メモに足していきます。
1ヶ月で音が別人になるわけではなく、変わるのは「自分の癖に気づける速さ」のほうです。
やめどきの目安|3つのうち2つが出たら素材を変える
同じ素材をいつまで続けるかは、感覚ではなく条件で決めたほうが迷いません。
- ✓ スクリプトを見ないで最後まで落ちずに追いかけられる
- ✓ 自分の録音の文字起こしが、2回とも元の英文とほぼ同じになる
- ✓ お手本と自分の録音を交互に聞いても、直したい差が見つからない
このうち2つが出たら、その素材は役目を終えたと考えて、次の1本へ移ります。
逆に、2週間まわしても1つも出ないときは、素材が今の自分には速すぎるか長すぎます。
続かないときに疑うのは、やる気ではなく素材の設定です。
AIシャドーイングでよくある質問
毎日15分で足りますか
足りるかどうかは目標によって変わるので、一言では言えません。
ただ、30分を3日でやめるより、15分を毎日続けたほうが、音の変化には向いています。
シャドーイングは、1回の長さよりも回数が効く練習だからです。
声を出せない場所ではできませんか
声を出さずに口だけ動かす形でも、リズムをつかむ練習にはなります。
ただし録音ができないので、その日は④と⑤が抜けた形になります。
録音のない日が続くと、確かめる工程が消えて、ただのなぞり読みに戻ってしまいます。
スクリプトは最初から見てはいけませんか
最初の2分だけは、見ないでおいたほうがいいです。
文字を先に見ると、聞き取れていない場所が自分で分からなくなるからです。
その2分が終わったら、遠慮なく開いて構いません。
AIが作った英文をそのまま覚えていいですか
そのまま全部を鵜呑みにするのは、おすすめしません。
生成された英文には、文法としては正しくても、その場面ではあまり使わない言い回しが混ざることがあります。
気になった文は、英語話者に当ててみるか、その言い回しが実際に使われている場面を調べてから採用してください。
発音記号を覚えたほうがいいですか
覚えていれば便利ですが、始める条件ではありません。
自分の録音とお手本を比べていくと、記号を知らなくても差そのものは耳で分かります。
差を言葉にしたいと思ったときに、その都度ひとつずつ調べるくらいで十分に回ります。
シャドーイングだけで話せるようになりますか
シャドーイングが受け持つのは、音の知覚と処理の速さの部分です。
自分で文を組み立てる力は別の練習で伸ばす必要があるので、これ1つで全部がそろうわけではありません。
ただ、音が届くようになると会話が止まりにくくなるので、先に手をつける価値のある土台ではあります。
AIを英語学習にどう組み込むかを、手を動かしながら学べる無料のウェブセミナーもあります。
まとめ|AIシャドーイングの使い方は「素材・15分・録音」で回る
最後に、この記事で書いたことをまとめます。
- ✓ シャドーイングが動かすのは、音の知覚と処理の速さの2つ
- ✓ 意味を追いながら口だけ動かす形だと、音の差に気づけないまま時間が過ぎる
- ✓ 素材は「1.0倍で7割・知っている内容・1分以内」の3つで選ぶ
- ✓ ちょうどいい素材が無いなら、場面と語数を指定してAIに作らせて読み上げさせる
- ✓ 1回15分=聞く2分・読む3分・影で追う5分・録音2分・比べる3分
- ✓ AIに任せるのは台本づくり・読み上げ・文字起こしの3か所だけ
- ✓ 文字起こしは文脈で補正されるので、録音を自分の耳で聞き返す工程は残す
- ✓ 最初の2週間は同じ素材を1本、1ヶ月目から場面を変えて3本へ増やす
私自身、アメリカで暮らしていても、音の癖は放っておくと元へ戻ります。
だからこそ、確かめる工程を持っているかどうかで、同じ15分の中身が変わります。
今日は30秒の素材を1本だけ選んで、録音までたどり着くところから始めてみてください。

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